• 公開日:2020年05月25日
  • | 更新日:2022年11月21日
最新のステッピングモータードライバの特徴的な機能とは

最新のステッピングモータードライバの特徴的な機能とは

ステッピングモータードライバ基板を新たに設計しようとしたときには、どのようなモータードライバを使えば良いのか悩む方は多いと思います。

近年、ステッピングモータードライバは各メーカーから多数リリースされており、様々な機能が組み込まれた製品も増えてきているため、このモータードライバICの選定は非常に難しくなってきています。本記事では、Texas Instruments社(以下TI社)のステッピングモータードライバをベースに、最新のドライバの機能について紹介します。そして、それらの機能により、どのようなメリットが得られるのかを解説します。

TI社のステッピングモータードライバの種類

TI社のステッピングモータードライバは、モーター電圧とピーク電流、そして制御インターフェースごとにデバイスが用意されています。以下の表がTI社のステッピングモータードライバの一覧です。

図.1 TIステッピングモーター一覧

図.1 ステッピングモーター一覧

ステッピングモータードライバを制御するIndexer(インデクサー)タイプとPhase/Enableタイプ、PWMタイプに分けられます。各タイプの特徴を以下に纏めます。

Indexerタイプ

  • ステッピングモーター専用のインターフェース
  • DIR信号で回転方向を制御
  • STEP信号入力ごとにモーターが1ステップ駆動
  • ステッピング速度はSTEP端子の入力周波数に比例
  • 内蔵インデクサーがマイクロステッピング動作に必要な電流レベルを算出

図.2 Indexerタイプ

図.2 Indexerタイプ

Phase/Enableタイプ

  • Hブリッジ1つにつき、シンプルな2線による制御インターフェース
  • Enableは導通のEnable/Disableを制御。Phaseは回転方向を制御
  • Phase/Enableの切り替え周波数を変えることで速度制御
  • VREFを制御する、またはEnable端子に入力するPWMのDutyを制御することでマイクロステップに対応

図.3 Phase-Enableタイプ

図.3 Phase-Enableタイプ

PWMタイプ

  • 各ハーフブリッジの個別制御が可能
  • IN1を固定し、IN2にPWMを入れることでHブリッジを制御し、IN1とIN2の制御を逆にすると回転が逆になる
  • IN端子に入力するクロックの周波数でモータースピードを制御

図.4 PWMタイプ

図.4 PWMタイプ

3つのインターフェースを紹介しましたが、これらの特徴を簡単にまとめると、STEP/DIRインターフェースは、制御するピンが少なく、モーターを簡単に制御できることから、安価なマイコンでも十分制御可能となり、ハードウェア開発及びソフトウェア開発の開発期間を大幅に短縮できます。ただし、STEP/DIRの場合、電流波形やマイクロステップの分解能はドライバの仕様によって決まるため、電流波形を細かく制御したい場合や、分解能の高いマイクロステップを行いたい場合には、パラレルインターフェースをおすすめしています。

また、最近のモータードライバには、追加の機能として、スマートチューニング機能や電流検出機能などが内蔵されています。次の章では、TI社のDRV8886ATを例に、これらの追加機能について説明します。

TI社のステッピングモータードライバIC :DRV8886ATの機能

DRV8886ATのブロック図を以下に記載します。DRV8886ATはIndexerタイプのドライバです。

図.5 DRV8886ATのブロック図

図.5 DRV8886ATのブロック図

出典:Texas Instruments – https://www.tij.co.jp/jp/lit/ds/symlink/drv8886at.pdf

このモータードライバには特徴的な機能がありますので、ここではそれらの機能について説明します。

特徴的な機能1:スマートチューニング

ステッピングモーターの場合、モータードライバからモーターへ電力供給をやめても、直ぐにモーターコイルからエネルギーは抜けず、コイルと同様に同じ方向にエネルギーがなくなるまで電流を流し続けます。そのため、電荷を逃がす仕組み(Decay)が必要です。このDecayにはFast DecayとSlow Decayの2種類があります。そして、これらの2つのDecayを組み合わせたMixed Decayという技術もあります。

ユーザーはモーターの仕様や動作状況に応じて、このDecayをコントロールする必要がありますが、スマートチューニング機能を搭載しているデバイスでは、スイッチングごとに次のDecayに対して、自動で最適なDecay設定をモータードライバが選択し実行をします。これにより、「正確な電流制御」「Decayチューニング不要」などのメリットが得られます。

図.6 スマートチューニング

図.6 スマートチューニング

本記事では詳細な説明を省きますが、Decay及びスマートチューニング(以前はAutoTuneと呼ばれていました。) については別の記事で詳しく説明しています。詳細を知りたい方は以下のリンクをご参照ください。

ステッピング・モーターの制御で重要な“Decay(電流減衰)”って知っていますか?~第一部:Decayとは~

特徴的な機能2:電流検出機能

ステッピングモーターの制御には定電流駆動方式が多く使用されており、この駆動方式でモーターを制御するにはモーター電流の検出が不可欠です。一般的にモーター電流の測定には電流検出抵抗を用い、この抵抗をモータードライバの外部に接続して使用しますが、発熱の問題や、基板サイズが大きくなってしまうなどの問題があります。

本デバイスの場合、モータードライバの内部に電流を検出する機能が組み込まれていますので、この電流検出抵抗が不要です。この抵抗が不要になると以下の3つのメリットが得られます。

  • 検出抵抗が不要になり、基板の部品点数とサイズが縮小
  • 検出抵抗を用いないので電力損失、発熱が減少
  • 電流検出部分の配線が不要となり、基板レイアウトの難易度を低減

さいごに

最新のステッピングモータードライバにはユニークな機能がチップの中に多数組み込まれており、従来よりも簡単に設計できるよう工夫されています。本記事で紹介したDRV8886ATは、スマートチューニング機能や電流検出機能が内蔵されているため、ハードウェアをシンプルに構成でき、簡単かつ効率的にステッピングモーターを駆動することができます。

今回の記事ではモータードライバの機能について、詳細までは記載できませんでしたが、簡単にステッピングモーターを回すイメージは持っていいただけましたか?

実際にステッピングモーターを回してみたい方はDRV8886ATの評価ボードの購入をご検討ください。詳細は以下の問い合わせフォームからお問い合わせください。

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