- 公開日:2022年09月30日
- | 更新日:2024年03月14日
SSDのフォームファクター(形状、規格)の種類について
- ライター:kishi
- メモリー
はじめに
フォームファクターとはPCの主要な部品について外観寸法やコネクタ類の規格や配置、固定のためのねじ穴などを規格化したものを指します。
この記事ではその中でも記憶装置であるSSD(Solid State Drive)について、また現在主流のまたは今後普及が見込まれるフォームファクターについて説明していきます。
HDDからSSDへの移行
データを記録するストレージとしてはこれまで主にHDD(Hard Disk Drive)が使われてきていました。HDDは内部に磁気的にデータを記憶する円盤、円盤を回転させるためのモーター、及び円盤とデータをやり取りするヘッドなどが内蔵されています。2.5インチ、3.5インチなどの種類があり、P(Parallel)-ATA(Advanced Technology Attachment)からS(Serial)-ATAへのインターフェースへの移行などがありましたが、その構造から基本的に形状は変わりませんでした。
2.5インチHDDの例
近年、振動に強い、転送速度が速いといったメリットからHDDに代わりSSDが普及してきています。SSDはHDDと同じくデータを記憶する役割を担いますが、HDDと異なり内蔵されたフラッシュメモリー(NAND素子)にデータを記憶するため、円盤やモーター、ヘッドといった物理的に動く機械部品がありません。そのためHDDのような内蔵された部品による形状の制約は基本的にありません。しかしながらSSDはHDDのリプレースの役割を担ってきたこともあり容易に移行できるよう2.5インチHDDと同じ形状のものがこれまで主流でした。
2.5インチSATA SSD
2.5インチHDDと同じ形状の2.5インチSSDは引き続きHDDからのリプレースや、ホットスワップが可能なこと、ホストとケーブルで接続できるなどの扱いやすさから現在でも主流なフォームファクターとなっています。2.5インチHDDでは7mm/9mm/15mm厚のものが販売されていますが、2.5インチ SATA SSDでは7mm厚のものが主流となっています。
2.5インチSSDの例
2.5インチU.2(U.3) NVMe SSD
これまでに説明してきたHDDやSATA SSDではHDDの特性に合わせたATA規格(主流はSerial転送に対応したSATA規格)が採用されています。一方でATA規格はHDDの特性に合わせたが故に、半導体メモリを搭載したSSDの特性を最大限に発揮させるためには、不合理な点も顕在化してきました。そこで半導体メモリを搭載したSSDの特性に合うNVMe(Nonvolatile Memory Express)規格が採用されたSSDがSATA規格に代わり主流になりつつあります。主にサーバー向けとしてはホットスワップ(活線挿抜)に対応した同じく2.5インチ形状のU.2(U.3)と呼ばれるSSDも主流となりつつあります。
U.3に対応したSSDもありますが後方互換性が保たれており、従来のU.2ストレージベイにも搭載できるようになっています。
U.2(U.3) NVMe SSDはこれまでのSATA SSDと信号方式が異なるため、コネクタも異なります。
2.5インチ U.3 SSDの例
U.2(U.3) SSD(上)とSATA SSD(下)の端子の違い
それぞれの端子を上から見たところ
どちらも2.5インチですが、U.2(U.3) NVMe SSDは物理層にPCI Expressを採用しており、高速なデータ転送を実現した一方で、発熱量が多くなり、冷却について考慮する必要があります。このため、放熱や冷却の観点から7mm厚ではなく15mm厚(上の図の上側のものが15mm厚)が主流となりつつあります。
また15mm厚のものはNAND素子をより搭載できることから30TBを超えるような大容量のSSDの実現にも寄与しています。
M.2 NVMe / SATA SSD
ノートPCの小型化やタブレットPCを実現するため、PCに内蔵されている部品は小型軽量薄型化を求められ、PCに必ず内蔵されているストレージにも小型軽量薄型化が要求されました。そこでSSDはHDDのように機械部品がないため、2.5インチストレージの外側のカバーを取り除き、板の形状をしたM.2 SSDがあります。
M.2 SSDの例
現在のノートPCでは2.5インチのHDDやSSDを内蔵できるスペースはなくM.2 SSDのみを内蔵できるようになっているものも珍しくありません。また接続ケーブルが必要ないことからデスクトップPCなどでも使用されます。
M.2 SSDの規格は大きさが複数規定されており、上のような幅22mm、長さ80mmのものが一般的で、M.2 2280規格と呼ばれます。他には同じ幅22mmですが、長さが異なる規格もあります。
M.2 SSDの種類例(上から22110、2280、2260、2242、2230)
一般的なM.2 2280の他にサーバー向けとしてより実装面積が広く大容量化や大容量キャパシタの搭載により電源断耐性を高められるM.2 22110や、タブレットPCなどに、より基板実装面積が限られる用途にM.2 2230が用いられることがあるようです。
M.2 SSDは裏表逆挿し防止のため端子に切り欠きがあり、M.2 SATA SSDではKEY M&B(切り欠きが2か所)のもの、M.2 NVMe SSDではKEY M(切り欠きが1か所)のものが多いようです。
最近ではM.2スロットがPCIeにしか対応していない場合もあり、M.2 SATA SSDを使う場合注意が必要です。(逆の場合もあります。)
M.2 SSDの切り欠きの違い(左:KEY M、右KEY M&B)
ホストや基板のM.2スロットにより対応/非対応が異なる場合がありますので注意が必要です。
加えてM.2 SSDは端子の反対側の半円状の部分をねじ止めして基板に固定しますが、基板に使用するSSDに対応したネジ穴が用意されているかも注意する必要があります。例えばSSDを固定する基板は以下の場合はM.2 2242~22110までのSSDは固定できますが、M.2 2230のSSDを固定することができません。
M.2 スロットの例(2230は固定できない)
他にもM.2 SSDは規格としてホットスワップには対応していません。
またPCIeの世代が新しくなることによって通信速度が上がり発熱が大きくなってきていることや、外側のカバーがないため冷却対策をする必要があります。
BGA SSD
SSDとしての機能を1チップ構成とし、BGAパッケージとして基板に直接実装するSSDもあります。直接実装とすることで、耐衝撃性を高めたり、実装面積をより削減することができます。一方SSDに搭載されているNAND素子の書き換え回数は有限であることからNAND素子が寿命に達した場合の交換が困難となります。
またフォームファクターとしてはM.2 1620として分類される場合もあります。
EDSFF SSD
最後に今後主にサーバーやデータセンター向けに普及が見込まれているEDSFF(Enterprise and Data Center SSD Form Factor)についても触れておきます。
EDSFFでは、サーバーラックの1RUや2RUのサイズにSSDをより高密度にSSDを実装し、かつより効率的に冷却を実現できる形状となっています。
E1.S/E1.L/E3.S/E3.Lが規定されており、
E1は1RUサイズ向けでM.2 SSDの発展形となり、基板の横幅を拡大しより多くの部品実装面積の確保とホットスワップに対応します。
E3は2RUサイズ向けで、U.2(U.3)の発展形となり、電力の規定を拡大することでさらなるパフォーマンス向上を図ります。
ドット以降のSあるいは、Lは形状を表しており、Sがショート形状、Lがロング形状となっております。
まとめ
従来のHDDは円盤やモーター、ヘッド等の機械部品が内蔵されていたためにその形状には制約がありましたが、SSDではそれらがなくなったためにいろいろな種類の形状のものがリリースされてきました。そのためSSDを適切に選定できるようフォームファクターについて理解しておく必要があります。この記事が選定をする際の一助となれば幸いです。
インターフェース | フォームファクター | 用途 | 選定ポイント |
PCIe | M.2 2230/2242/2260 | タブレットPCなどの小型端末向け | 搭載基板が対応しているか要確認(2230、2242、22110) 冷却に気を付ける必要あり ホットスワップ不可 |
M.2 2280 | ノートPCやデスクトップPCなどClient/Consumer向け | ||
M.2 22110 | サーバーのBoot、キャッシュ用途向け | ||
BGA(M.2 1620) | 車載など産業向け | コネクタを使用せず直接実装できるためにはずれたり接触不良がなく、さらに実装面積を減らせる 取り外しは不可 |
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2.5インチU.2(U.3) | サーバー向け | コネクタ形状は同じであるためU.3はU.2と後方互換あり 冷却の観点から15mm厚のものが主流、大容量品もあり ホットスワップ可能 |
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EDSFF (E1.S/E1.L/E3.S/E3.L) |
サーバー向け | 今後サーバー向けとして採用が拡大する見込み 2.5インチと形状が異なるため、ベイが対応しているか確認が必要 大容量品もある ホットスワップ可能 |
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SATA | M.2 2280 | 通常のストレージ、キャッシュ用途向け | M.2スロットがSATAに対応しているか確認する必要あり ホットスワップ不可 |
2.5インチ | ノートPCやデスクトップPCなどClient/Consumer向け | 2.5インチHDDのリプレースなどで使用されることもある ホットスワップが可能など、取り扱いが容易で一般的によく使用されています |
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以上
Client/Enterprise/Consumer SSDの違いについてはこちらの記事をご覧ください。
SSDの消費電力とパフォーマンスについてはこちらの記事をご覧ください。
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