- 公開日:2024年11月29日
GaNは扱いにくい?壊れやすいのはなぜ?
- ライター:Ken
- その他
GaN HEMTとは
HEMT (High Electron Mobility Transistor)とは高電子移動度トランジスタのことです。GaNはSiCよりも性能が優れていますが、結晶や加工が難しい材料です。Siの表面にGaNを結晶成長させた基板を用いて表面だけで素子を形成するHEMTという技術が用いられています。
横型GaN(GaN-on-Si)構造図
横型GaNは上図のように横方向に電流が流れ、縦型よりもコストを抑えてGaNの高周波特性を活用できます。
GaN HEMTにおける課題
一般的には、GaN-HEMTはノーマリオンであるため、MOSFETと同じような制御ができません。回路的にノーマリオフの方が制御しやすいので、ノーマリオフ化がGaN-HEMTの課題となっています。GaN-HEMTはノーマリオフを実現する手法の一つにカスコード接続があります。カスコード接続とは、下図のように低耐圧MOSFET(LV-MOSFET)と直列に接続して使用します。一般的には2つのチップを1つパッケージに組み込んで構成します。
今現在市場に存在しているGaN製品の大半は、ゲート・ソース間の定格電圧が低いため、非常に壊れやすいです。
駆動電圧が5Vに対してVgsの定格電圧が6Vしかありません。高周波領域ではGaNが非常にセンシティブですので、オーバーシュートやリンギングなどで一瞬でも定格電圧を超えるとデバイスの信頼性に問題を引き起こす可能性があります。実際の評価の中でも壊れるケースがよく見られます。
また、GaNデバイスを制御する時には、耐圧が低いためノイズで壊れる心配があり、ノイズを拾いにくいBGAパッケージを採用しているメーカーさんが多いです。基板実装や載せ替えたい時などで非常に扱いにくいパッケージですので、特に試作時は大変です。実装性以外に、放熱性についても懸念が残っています。
BGA(Ball Grid Array)PKG
Renesas製TP65HシリーズのGaNFETで課題解決
例えばTP65H070G4PS 650V, 72mΩのSuperGaN@GaNFETはD-mode型ノーマリオフデバイスです。第4世代SuperGaN®プラットフォームを採用しており、独自のウェハプロセスにより、競合するGaN製品と比べて損失/性能が25%向上しております。特にゲート・ソース間の耐圧が±20Vになっており、5Vの駆動電圧に対して充分なマージンが確保できます。
E-mode GaNと比べてD-mode GaNの優位性
E モード GaN FET は、エンハンスメント型FET に非常によく似ています。1.5V ~ 1.8V の正電圧で FET のターンオンが始まります。これは、ゲート・スレッショルドを 6V と規定している大半の動作条件の場合に該当します。ただし、ほとんどの E モード GaN デバイスは最大ゲート・スレッショルドを 7V と規定しており、この規定に反した場合、永続的な損傷が生じる可能性が高くなります。カスケードD-mode GaNにすることで負のゲート・スレッショルドを用意しなくても良いですし、Vgsの耐圧が大幅に増大するこで充分な制御マージンが確保できます。
Renesas製TP65Hシリーズは、放熱性が良いTO220パッケージを採用されており、汎用性も実用性も優れております。特に試作時に実装や取外しなどが楽になります。
採用事例
2輪EV車用500Wオンボードバッテリチャージャブロック図を下記リンク先にてご参照ください。
2輪EV車用500Wオンボードバッテリチャージャ | Renesas ルネサス
詳細資料はこちら
The Fundamental Advantages of Normally-Off D-Mode GaN