• 公開日:2025年03月17日
  • | 更新日:2025年03月29日

【ルネサス社】電池残量検知ICの専用GUIツール使ってみた

はじめに

この記事では、ルネサス社が提供する電池残量検知ICであるFGIC(Li-ion Battery Fuel Gauge IC)を用いて、
専用GUIツールである”RSB tool”が、バッテリーの状態によってどういった表示となるかをご紹介します。
 
バッテリー残量を正確に表示したい
・バッテリー寿命を長持ちさせたい
・環境の導入が難しそう・・・
 
こういった悩みの解消となれば幸いです!!

 

FGICとは

FGICについて、詳しくはこちらの記事を参照ください。
リチウムイオンバッテリー(Li-ionバッテリー)の残量予測方法の基礎知識 – 半導体事業 – マクニカ

ルネサス社のFGICのラインアップについて、詳しくはこちらの記事を参照ください。
ルネサス 電池残量管理IC製品 – Renesas – マクニカ

 

今回使用したFGICの紹介

今回使用するFGICはこちらになります。
製品名:RAJ240055
ターゲットアプリケーション:ノートPC、タブレット端末、DSC etc
対象セル数:2~4セル
特徴:RAJ240055は、MCUとアナログ・フロントエンドデバイスを1パッケージ化したICです。
超低消費電力動作で高いパフォーマンスを実現できるルネサスRL78 CPUコアと、
様々なバッテリー保護および管理機能を内蔵しています。
制御ファームウェアを内蔵フラッシュメモリに格納し、内蔵されたアナログ回路およびデジタル回路を制御して、
電池の電圧/電流/温度測定、残量推定、過電流/電圧/温度保護などの電池管理動作を実行することができます。
電池の状態は、GUI表示画面にて確認することが出来ます。

図1.RAJ240055ブロック図

 

RSB tool出来ることって?

RSB Toolは、ルネサスが提供するFGICをサポートするためのGUIベースのツールです。
以下の機能や特長があります。

  1. ユーザーフレンドリーなインターフェース:
    • 使いやすいインターフェースを通じて、ユーザーは簡単にICの設定、データモニタリング、その他のタスクを行うことができます
  2. リアルタイムデータ管理:
    • バッテリーの電圧、電流、温度、充電状態など、リアルタイムでのデータモニタリングと管理が可能です
  3. パラメータの調整:
    • ICの動作パラメータを調整することで、特定のアプリケーションやシステム要件に合った最適な設定が行えます
  4. データログ機能:
    • バッテリーパフォーマンスのトラッキングや解析のために、長期間のデータログを取ることができます
  5. 診断機能:
    • 不具合や問題の早期発見のための診断機能を搭載しており、システムの信頼性向上に寄与します
  6. 制御機能の提供:
    • バッテリー管理における各種制御機能、例えば保護機能や劣化診断機能の設定が可能です

では、GUI上の説明を動作中の画面でしていきます。

GUI上にバッテリーの動作状態を表示してみよう

今回は4セル、充電電流1000mA、充電電圧16.8Vを想定したアプリケーションとします

まず、RAJ240055を、4セルで使用する条件にてキャリブレーションを行った後、以下の印可条件で動作させます。
キャリブレーション方法に関しては、下記のリンク先記事を参照下さい。
ルネサス 電池残量管理ICの動作確認をしてみた – 半導体事業 – マクニカ
<印可条件>
VCC=16V (安定化電源)
IOUT=0mA
Ta=25℃

RAJ240055のEVBに、安定化電源にて電圧リチウムイオン電池4セル相当の電圧(16V)を、無負荷で印可している状態となります。

図2.動作環境

 

正常動作をしている時の、GUI表示画面は以下の状態となります。

図3.RSB tool表示

動作中の電池状態は、ツール表示の「SBDC」タブ上に表示されます。
赤枠部分に、バッテリーの状態と、バッテリーパック全体の状態を示す表示がされています。
ここをみることで、バッテリーの状態がどうなっているかが分かります。

赤枠内の各パラメータ表示の意味は下記になります。

赤はON緑はOFFのステータスを示しています

■Battery Status

Name ONするタイミング OFFするタイミング
OTA 異常な温度状態が検出された場合 通常の温度状態に戻ったとき
ODCA 過放電電流が検出された場合 充電状態のとき
OCCA 過充電電流が検出された場合 放電状態のとき
SCA 短絡が検出された場合 充電状態のとき
D 現在の電流が0未満の場合 現在の電流が0以上の場合
FC 満充電のとき 放電状態のとき
FD 最小電圧が0%の場合(完全放電) 充電状態のとき

OTA (OVER_TEMP_ALARM) : 温度異常信号
ODCA (OVER_DISCHARGE_CURRENT_ALARM): 過放電信号
OCCA (OVER_CHARGE_CURRENT_ALARM): 過充電信号
SCA (SHORT_CURRENT_ALARM): 短絡信号
D (DISCHARGING): 放電状態
FC (FULLY_CHARGED): 満充電状態
FD (FULLY_DISCHARGED): 完全放電状態

■Pack Status

Name 説明
DFET D-FETの状態。(0=OFF, 1=ON)
CFET C-FETの状態。(0=OFF, 1=ON)
SYS 現在のSYS接続状態 (0=切断, 1=接続)
CP CPの検出条件。(0=検出しない, 1=検出)

DFET :電池をDischargeしている際に動作するMOSFET(ドライバ)
CFET :電池をChargeしている際に動作するMOSFET(ドライバ)
SYS : battery挿入の有無
CP : 電流制限保護

 

CFETDFETは、回路図で示すところの、下記部分に当たります。

図4.RAJ240055ブロック図

充放電の動作をする際は、DFETとCFETはONする状態となります。
実際に、図1では、DFETとCFETがONを示しており、問題なく動作していることが分かります。

 

まとめ

リチウムイオンバッテリーは、使い方を間違うと、発火や爆発など、とても危険な状態となります。
そのため、バッテリー残量や、バッテリーの状態を管理することはとても重要です。
専用GUIツールを使用することで、設計段階から製品の製造まで、
効果的なバッテリー管理システムの構築がサポートされます。
FGICを用いたバッテリーの正確な状態判断や効率的な管理が求められるシーンにおいて、
RSB Toolは不可欠なツールといえます。
ご不明点がございましたら、ルネサスのサポート窓口や技術フォーラムをご確認ください。

FGICの導入に役立つこと間違いなしです!

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