• 公開日:2025年09月24日
  • | 更新日:2025年09月29日

車載Ethernet導入背景と物理層

Ethernetとは?

昨今、「Ethernet」を耳にする方が多いと思います。

しかし、Ethernetがどのようなもので、どのような役割を果たしているかを分かる人は少ないのではないでしょうか?

簡単にEthernetを要約すると、

「コンピュータネットワークで広く使われる優先通信技術のこと」です。

しかし、これではどんなものか理解できません。

Ethernetはパソコンなどの機器を有線接続し、信号のやり取りをする際に使われている通信規格であり、このEthernetが車に搭載されているネットワーク技術の1つとして注目を浴びています。

そこで、Ethernetがどのようなものであるかを理解するため、簡単に車載ネットワークについて導入背景や規格概要などをご紹介していきます。

 

車載に何故Ethernetは必要か?

車業界におけるトレンドについて簡単に触れます。

現在、車業界では自動運転支援機能の搭載をはじめとして、高機能化が進んでいます。

ベースとなるテクノロジーとして、AD/ADAS、電動化、コネクテッド、などがあげられます。

今後、車は高機能化していく中で、外の世界と繋がり、自動化とともに電動化も進んでいくと言われています。

これらを実現するために、自動車に搭載されたECUセンサー、アクチュエータなどを繋ぐシステムの構造は大きく変わろうとしています。

つまり、E/Eアーキテクチャへの大きな変化が求められています。

 

車載Ethernetの導入背景

Ethernetが注目された背景には、AD/ADAS、電動化、コネクテッド、といったテクノロジーの進化とこれに伴うE/Eアーキテクチャの変化が大きく関係しています。

E/Eアーキテクチャの変化により、

・分散処理から集中処理

・通信データ量の増大

・動的なシステムアップデート

が進みます。

これにより、大量の情報を速く、それを必要としている相手に届ける手段が必要になってきました。

今後、カメラやセンサーから送り出される情報量は、数ギガbpsまで増えると言われており、

現在の車載ネットワークプロトコルの主流であるCANの通信速度では対応しきれなくなります。

これらのことより、Ethernetが注目されるようになりました。

 

物理層

物理層の役割はデータリンク層から受け取ったデジタルデータを物理的な信号に変換して、

伝送媒体を介して送信を行い、またその逆の役割を担います。

Ethernetにおける物理層をEthernet PHYと呼んでいます。

以下、OSI参照モデルを示します。

Ethernet PHYですが、伝送媒体や伝送速度の違いによって、規格化がされています。

伝送媒体である、物理媒体、銅線、光ファイバー等や、採用している符号化方式に応じて、

PHYの内部構造も変わってきます。

そのため、伝送媒体や伝送速度ごとに規格が決められています。

車載Ethernetとしては、民生用途として使用されている100BASE-TXをもとに、100BASE-T1が

策定されましたが、その後、将来の車載ネットワークを見据えて、100BASE-T1より高速な

1000BASE-T1や制御用通信での活用を目指す10BASE-T1Sが策定されています。

以下、各規格について記載します。

 

(1)100BASE-T1

・通信速度:100Mbps

・IEEE802.3bwとして標準化

・重量とコストの面で優れるツイストペアケーブル(UTP)を使用

・全二重通信(Full Duplex)

→同時にデータを送受信できる。

・符号化技術:4B3B、3B2T、PAM3

・クロックリカバリー/同期:マスタスレーブ方式

 

(2)10BASE-T1S

・通信速度:10Mbps

・IEEE802.3cgとして標準化

・重量とコストの面で優れるツイストペアケーブル(UTP)を使用

・全二重通信/半二重通信

・トポロジ:P2P,マルチドロップ(バス型)

・符号化方式:4B5B

・クロックリカバリー/同期:マスタースレーブ方式

 

(3)100BASE-TX

・通信速度:100Mbps

・PCで使われるものと同じ規格

・車載では、故障診断で使用される

→DoIP(Diagnostic Over IP)

・送信/受信(Tx/Rx)

→別々のケーブルで通信

・クロックリカバリー

→送信側がクロックを提供

→連続的に同期処理を実施

 

ここまでが物理層のご紹介となります。

 

まとめ

・車業界のトレンドにはAD/ADAS、電動化、コネクテッドの3つがあり、これらを実現していく中で

E/Eアーキテクチャへの大きな変化が求められていることからEthernetが注目されている。

 

・物理層の役割はデータリンク層から受け取ったデジタルデータを物理的な信号に変換し、

伝送媒体を介して送信を行う。

 

・Ethernet PHYの規格として、100BASE-T1、100BASE-T1S、100BASE-TXがあり、

各規格により用途が違う。

 

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