- 公開日:2019年01月30日
- | 更新日:2024年05月31日
初めてでも分かる!湿度センサーの仕組みをわかりやすく解説
- ライター:Kevin
- センサー
IoTに欠かせないセンシング技術の一つに、湿度センサー(湿度センサ)があります。湿度は、機械の動作を左右したり、食品や半導体などの保存条件に影響を与えたりと、多くのシーンで計測、管理が求められるものです。
本記事では、湿度の基本や、湿度センサーの仕組み、種類を説明するとともに、弊社がおすすめするIntegrated Device Technology社(以下、IDT社)が開発した湿度センサーICを紹介します。
湿度とは? 湿度の基礎知識
まず、「湿度とは何なのか」から解説します。湿度とは、空気中に含まれている水蒸気の量を比率で表したものです。空気中に含むことができる最大の水蒸気量を「飽和水蒸気量」と言いますが、この飽和水蒸気量は温度によって変わる特性があります。
下記は、温度の変化における、1立方メートルの空気中に含むことができる水蒸気量をグラフで示したものです。
飽和水蒸気量のグラフ
湿度の表現方法、相対湿度と絶対湿度
単純に「湿度」と言っても、その表現方法はいくつか種類があります。今回は相対湿度と絶対湿度について簡単に紹介します。
「湿度」と言っても、その表現方法にはいくつかの種類があります。本項では、相対湿度と絶対湿度について簡単に紹介します。
相対湿度(%RH)
単に「湿度」と言う場合は、相対湿度としての表現が一般的です。例えば、天気予報で見かける「湿度40%」はこの相対湿度による表現です。単位は「%」が一般的ですが、相対湿度であることを明示するために「%RH」とすることもあります(RH=Relative Humidity、相対湿度)。
相対湿度は、水蒸気量とその時の温度における飽和水蒸気量との比率を百分率で示したものです。
相対湿度のポイントは「その時の温度における」という部分です。先述の通り、飽和水蒸気量は温度によって変化します。この「温度と相対的な関係にある特性」を加味して表現しているので、相対湿度と呼ばれます。
絶対湿度(g/m3)
絶対湿度は1立方メートルあたりに含まれる水蒸気量を示したものです。容積絶対湿度とも呼ばれます。こちらは飽和水蒸気量を加味しません。つまり、相対湿度とは異なり、温度の影響を受けない表現方法です。
湿度センサーの仕組み
では、湿度センサーはどのような仕組みで湿度を測定しているのでしょうか。
電子式の湿度センサーには、主に抵抗式と容量式の2種類があります。どちらも感湿材料を電極で挟んだ構造となっています。
抵抗式は以下の図のような構造となっており、感湿材料の吸湿/脱湿によって変化する抵抗値を捉えて計測します。
抵抗式湿度センサーの仕組み(例)
容量式の場合は、感湿材料の吸湿/脱湿によって変化する静電容量を捉えて計測します。
容量式湿度センサーの仕組み(例)
湿度センサーの選び方
湿度センサーには、さまざまな種類があります。検出方法にも抵抗式と容量式の2種類がありますし、センサー素子のみのものもあれば、ICタイプ(センサー素子とADコンバータなどの計測部を一つのICにしたもの)もあります。どんな湿度センサーを選んだらいいのでしょうか?
どのタイプも一長一短ですが、なかでも容量式の湿度センサーICは、次のような点で優れています。
低湿度でも計測することができる
抵抗式では原理上、低湿度を正確に計測することができません。一方、容量式であれば低湿度でも計測できます。低い湿度での計測があり得る場合は、容量式を選択すべきです。
応答速度が高い
湿度の変化が激しい場合、その変化にどのくらい速く追従できるか、というのはとても重要なポイントです。容量式は抵抗式よりも応答速度が高いという特徴があります。
小型で手軽
センサー素子だけで販売されることもありますが、センサー素子を使用する場合、ADコンバータなどの計測部は自身で設計する必要があり、とても手間がかかります。
ICタイプであれば、チップ内に計測部も含まれています。また、先述の通り相対湿度は温度の影響を受けるため、湿度センサーICは湿度センサー素子だけでなく温度センサーも内蔵しているのが普通です。そのため、ICタイプのほうが手軽に湿度も温度も計測できます。また、ICタイプのほうが、実装面積を小さくすることができるというメリットもあります。
IDT社の湿度センサーIC
IDT社のHS300xシリーズはまさにその「容量式の湿度センサーIC」です。
湿度センサーICの中でも精度がよく、安定性に優れ、応答時間も早いのが特徴です。医療機器や、家電製品、産業機器の他、パッケージも小さいのでポータブル機器にも適した湿度センサーICです。
HS3001 | HS3002 | HS3003 | HS3004 | |
---|---|---|---|---|
湿度精度 (Typ.) | ±1.5%RF | ±1.8%RF | ±2.8%RF | ±3.8%RF |
長期安定性 | 0.1%RH / Yr drift | |||
応答時間 (Typ.) | 6秒 | |||
通信インタフェース | I2C | |||
サイズ | 3.0 x 2.41 x 0.8mm LGA |
HS300xシリーズのスペック(抜粋)
詳細なスペックはHS3001のデータシートをご参照ください。
湿度センサーHS3001の評価ボード
HS3001には評価ボードが用意されています。確認してみたい方はこちらを購入するといいでしょう。
PCとUSB接続し、専用のGUIでHS3001の湿度データ、温度データをモニターすることができます。どれだけ小さいか、どれだけ回路設計が容易なのかをぜひ実物でご確認ください。
HS3001 と 評価ボード(SDAH01)接続イメージ
湿度センサーHS3001の評価ボードについて、詳しくはこちら
まとめ
以前は、湿度センサーICのような製品はありませんでした。そのため、センサー素子を購入し、計測部などを設計する必要がありました。湿度センサーの精度を出すために、A/Dコンバータ精度や温度補償等、設計のためにさまざまなノウハウが必要でした。
しかし、湿度センサーICの登場により、使い方が簡単になり、かつ、ある程度の精度をIC自体が保証してくれるようになりました。つまり、気軽に湿度センサーをシステムに組み込める時代になったということです。また、こういった湿度センサーICには温度センサーも付いているため、温度と湿度の両方を小さいICで簡単に計測できます。
ルネサス製品をお探しの方はぜひメーカーページもご覧ください。