- 公開日:2019年06月24日
- | 更新日:2022年11月30日
リモートI/Oとは?省配線化&ノイズ対策の2つのメリット
- ライター:April
- インターフェース
工場に代表されるファクトリーオートメーション(FA)の現場では、センサやスイッチなどの接点データ、温度や圧力といったアナログデータなど、数多くのデータが存在します。しかし、広い工場内のデータを1点1点見て回っていたら日が暮れてしまいます。そこで必須になるのがリモートI/Oです。
シリアル通信のネットワークを利用して、遠隔でデータ入出力を行おうというわけです。今では現場機器(測定器、操作器)の多くがデジタル化しており、コントローラと遠く離れた地点でも問題なく通信して、リアルタイムにデータをやり取りできます。
ステップテクニカ製品もリモートI/Oに非常に適した特性を持っていますので、ここではいくつか実例を含めて紹介していきたいと思います。
リモートI/Oとは
リモートI/Oとは、遠く離れた地点のデータを、ネットワークを介してやり取りする装置のことですが、なぜそのような装置が好まれるかと言えば、省配線化とノイズ対策が大きな理由です。
リモートI/Oの用途と役割
リモートI/Oの主な用途は省配線でしょう。遠く離れた場所から、信号を1本1本電線で引っ張るのは効率が悪いため、これを1本の通信線だけで済ますことができれば大きなメリットになります。
ステップテクニカのHLSを例に取ると、1ノードで32点(16DIN, 16DOUT)の信号を接続することができ、これを最大63ノードまで接続することができるため、1本のフィールドバスで2016点の信号をまとめることが可能です。極端な話、2016本のケーブルを1本にまとめることも可能です。
この写真は以前当社で作って展示していたものですが、従来のパラレル接続では写真のようにぐちゃぐちゃとケーブルが入り乱れています。これに対し、ステップテクニカ製品を使えばケーブル一本でそれぞれをつなぐことができます。配線を間違うこともなくなりますし、製品を小型化できてメンテナンスも楽になります。
また、リモートI/Oを使う理由の一つにノイズ対策があります。現場機器にはデジタル信号だけでなく、0-5Vや4-20mAといったアナログ信号も存在しており、アナログ信号を長距離伝送するとなればノイズの影響が懸念されます。
そこで、アナログ信号をそのまま伝送するのではなく、一度デジタル信号に変換してから通信することでノイズに強い通信が期待できます。ステップテクニカのHLSやCUnetのように、エラー訂正や波形補正機能を持ったフィールドバスを採用すればなおさらです。
リモートI/Oの使い方
リモートI/Oは通常、マルチドロップやデイジーチェーンと呼ばれる、一筆書きの伝送線路で接続します。芋づる式やバス式と呼ばれることもあります。1本のケーブルに全ての機器を接続する形です。計測・制御機器の多くが、昔からRS485規格を採用しているため、マルチドロップ接続が基本(※)になっています。
※マルチドロップの他に、スター型やリング型などの接続形式もあります。
ちなみに、リモートI/Oの反対語はローカルI/Oとなりますが、ローカルI/Oは入力・出力1点1点に対して、1組の伝送線路が必要になります。
また、世の中に出回っているリモートI/O製品は、何かしらの産業用ネットワーク(フィールドバス)に対応していることが多く、生産ラインの見直しを行う際にシステム全体を組み替える必要はなく、新たに必要になった機能だけを簡単に追加できるのもメリットです。
ステップテクニカのリモートI/O
ステップテクニカにはHLSとCUnetという2つの通信プロトコルがありますが、両者ともノイズに強く、省配線化(シリアル化)、長距離通信が可能という特長を持っているため、リモートI/Oの制御に適しています。
さらに詳しく、両者の特長を見ていきます。
HLSのリモートI/O
HLSはリモートI/O制御として最適なネットワークです。HLSは1個のマスタICに最大63個のスレーブICがつながるリモートI/Oを構成できます。1つのスレーブICは、16ビットの信号入力と16ビットの信号出力を利用できます。
しかも、通信に関するソフトウェアを一切必要とせず、遠く離れたI/OをメモリマップドI/Oとして制御できるのが大きな特長です。詳しい仕組みは『HLSのリード/ライト動作』をご確認ください。
応答速度が高速なため、63個のスレーブIC(2016点のI/O)を1ms以内に一括制御することができます。また、ネットワークが稼働中であっても、ネットワークを停止せずにスレーブの活線挿抜が可能です。
CUnetのリモートI/O
CUnetはリモートI/Oとして動作させる場合、CPU無しで動作するという面白い特色を持っています。
なぜCPU無しのI/Oステーションのみによる構成が可能かというと、プロトコルを内蔵しており、CUnet IC単独での通信が可能だからです。システム内にCPUが介在せずハードウェアのみで通信が確立できるため、非常に信頼性が高い通信を実現できます。
詳しくは『リモートI/Oユニットで高信頼性の通信を実現する方法』をご確認ください。これが医療やインフラといった、高い信頼性が求められる分野でもCUnetが活躍できる要因の一つです。
名称 | HLS (Hi-speed Link System) | CUnet | ||
---|---|---|---|---|
通信方式 | マスタ/スレーブ型ポーリング方式 | マルチマスタ型ブロードキャスト方式 | ||
接続形態 | マルチドロップ方式(RS485) | マルチドロップ方式(RS485) | ||
通信速度 | 12Mbps/6Mbps/3Mbps (全二重/半二重) |
12Mbps/6Mbps/3Mbps (半二重) |
||
通信ケーブル | カテゴリ3以上のシールドケーブル | カテゴリ3以上のシールドケーブル | ||
接続ノード数 | 最大63ノード | 最大64ノード | ||
I/O制御数 | 1端末:16 IN, 16 OUT | 1ノード:8バイト単位 | ||
63端末:1008 IN, 1008 OUT | 最大64ノード:512バイト | |||
通信距離 | 通信速度 | ネットワーク最大長 | 通信速度 | ネットワーク最大長 |
12Mbps | 100m | 12Mbps | 100m | |
6Mbps | 200m | 6Mbps | 200m | |
3Mbps | 300m | 3Mbps | 300m | |
トポロジ | バス(HUB使用時:ツリー/スター) | バス(HUB使用時:ツリー/スター) | ||
通信プログラム開発 | 不要 | 不要 | ||
パケット衝突 | なし | なし |
HLS/CUnetを採用しているユニットメーカーをご紹介
国内でも、リモートI/O製品を製造しているメーカーはたくさんあります。主な会社名を挙げると、
- オムロン
- コンテック
- アルゴシステム
- エム・システム技研
- エムティティ
- エニイワイヤ
- オンテック
- パナソニック
- IDEC
- 渡辺電機工業
- 横河電機
など数多くのメーカーがあり、海外メーカーも含めると覚えきれないほどです。
リモートI/O製品の多くは、コントローラとなるPLCと接続されます。日本では三菱のシーケンサMELSECや、オムロン、キーエンスといったPLCメーカーが有名です。これらのPLCはCC-LinkやDeviceNet、PROFIBUSなどのRS485系ネットワークに対応しており、最近ではEtherCATやEthernet/IP、PROFINETといったEthernet系ネットワークに対応した製品も増えています。つまりPLCと接続するために、リモートI/O製品も同じネットワークに対応しているというわけです。
そんな中、ステップテクニカのHLSやCUnetに対応したPLCやリモートI/Oを製造しているメーカーもあり、彼らは独自のネットワーク名を付けて販売しているケースもあります。HLS/CUnet対応のリモートI/O製品メーカーを、一部紹介いたします。
アルゴシステム(A-Link, A-net)
(株)アルゴシステムでは、HLSに対応した「A-Link」と、CUnetに対応した「A-net」というネットワーク製品をもっており、リモートI/Oの制御に最適です。
それぞれマスタユニットとスレーブユニットを多数ラインナップしており、高性能プロセッサ搭載の各種マスタユニットと、デジタルI/OユニットやアナログI/Oユニット、位置決めユニットなどの各種スレーブユニットを揃えています。
エム・システム技研
(株)エム・システム技研では、少チャネルコンパクト一体形リモートI/Oの「R7シリーズ」でHLS対応品を用意しています。接点入出力や、直流電圧/電流の入出力、パルス入力など機種が豊富です。
また、Ethernet系ネットワークに対応した「R30シリーズ」の内部バスとしてCUnetを採用しています。
製品ラインナップにはHLS、CUnetのHUBユニット「JCシリーズ」もあり、通信ケーブルの分岐配線や、総延長を伸ばしたいときのリピーターとして活躍します。ステップテクニカ社ではHUBユニットの用意がないため、エム・システム技研のJCシリーズがおすすめです。
オンテック(SAVE NET)
(株)オンテックの「SAVE NET」では、ネットワークにHLSを採用しています。
通信速度3Mbps、I/O点数2016点で応答速度8msecと、HLSの特性を活かしたネットワークで、伝送距離は最大500mです。これらの特長を活かし、半導体製造装置、物流ソーター、立体駐車場、ピッキングシステム、ビルオートメーション、プラント機器など幅広い分野でのシステム構築に一役買っているようです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。リモートI/O製品は数多くの測定データを扱う現場では必須の装置と言えます。その多くは産業用ネットワークに対応している製品で、日本では特にCC-Link対応の製品がたくさんあります。
ただ、馴染みが薄いかもしれませんが、ステップテクニカのHLSやCUnetに対応している製品も多く、製品の特長を考えればリモートI/Oに非常にマッチしていることがご理解いただけると思います。
次の記事では、CUnetの特性を活かしたリモートI/Oを活用して、CPUレスで高信頼性のシステムを構築する方法をお伝えします。