- 公開日:2020年03月02日
- | 更新日:2024年02月13日
Battery Charging Specification 1.2(BC1.2)とは
- ライター:Yaita
- インターフェース
はじめに
基本的にUSB2.0ホストは1ポートあたり500mAまで、USB3.1では900mAまで供給できることが求められているのは馴染みが深いかと思いますが、これらを超える充電電流を流すためのUSB規格、USB Battery Charging specification 1.2(BC1.2)が策定されています。
ここではおさらいとして、BC1.2の概要について振り返りたいと思います。
Battery Charging Specification 1.2
BC1.2は2010年に策定された、USB Portable Deviceの急速充電と、充電器の統一を目指した規格です。
従来は、多くのUSBホストはバスパワーの規定を超える給電能力を持っているにも関わらず、ポータブルデバイスがUSBホストの給電能力を知る方法が無く、その結果、ポータブルデバイスはUSB2.0では最大500mA、USB3.1では最大900mAまでしか電流を引く事ができなかったのです。その課題に対して、BC1.2では、ポータブルデバイスがUSBホストまたはUSBハブの給電能力を知る方法が規定され、従来のバスパワーの規定を超える充電電流(最大1.5A)を流す事が可能になりました(※)。これは、従来のUSB 2.0規格に影響を与えない範囲で、ポータブルデバイスとUSBホスト、もしくはUSBハブ間で簡単なハンドシェークを行うことで実現しています。
※給電ポート、ポータブルデバイス共にBC1.2に対応している必要があります。
図1. USB Battery Chargingによるハンドシェーク
BC1.2で規定されている給電ポートの種類は3つ
BC1.2では給電ポートの種類を以下の3種類で規定しています。
- SDP:Standard Downstream Port
- CDP:Charging Downstream Port
- DCP:Dedicated Charging Port
上記のうち、CDPとDCPをCharging Portと呼び、ポータブルデバイスはこれらのポートであることを検出する事によって最大1.5Aまでの電流を引く事ができます。SDPはCharging Port以外のポート、つまり従来のUSB2.0では500mA、USB3.1では900mAまで供給できるポートと同義です。
※CDPとDCPの主な違いとしては、CDPはUSB2.0通信をサポートしているポートに対して、DCPはUSB2.0通信をサポートしていない充電専用のポートです。
ポータブルデバイスが給電ポートを見分ける方法(BC1.2)
BC1.2に準拠しているポータブルデバイスはこの3種類の給電ポートを2段階のフローで検出しています。
- Primary Detection:給電ポートがSDPか、もしくはCharging Port(CDP or DCP)かの検出
- Secondary Detection:給電ポートがCDPか、もしくはDCPかの検出
Primary Detection
まずポータブルデバイスがD+ラインに0.6Vを出力し、給電ポートがD-に信号を返さなければ、ポータブルデバイスは給電ポートをSDPとして検出します。もし給電ポートがD-に0.6Vを出力すれば、ポータブルデバイスは給電ポートをCharging Port(CDP or DCP)として検出します。
図2. 給電ポートがSDPポートの場合
図3. 給電ポートがCharging Port (CDP or DCP)の場合
Secondary Detection
Primary Detectionで給電ポートがCharging Port(CDP or DCP)として検出できると、Secondary Detectionとして今度はポータブルデバイスがD-ラインに0.6Vを出力し、給電ポートがD+に信号を返さなければ、ポータブルデバイスは給電ポートをCDPとして検出します。もし給電ポートがD+に0.6Vを出力すれば、ポータブルデバイスは給電ポートをDCPとして検出します。
図4. 給電ポートがCDPポートの場合
図5. 給電ポートがDCPポートの場合
BC1.2の各ポートまとめ(USB Type-Cポート含む)
BC1.2の各ポートをまとめると図6になります。
Port Type | Supports USB2.0 Communication | Maximum Allowanable Current Drawn By Portable Equipment (A) |
---|---|---|
SDP (USB2.0) | Yes | 0.5 |
SDP (USB 3.0 and 3.1) | Yes | 0.9 |
CDP | Yes | 1.5 |
DCP | No | 1.5 |
Type-C | Yes | 3.0 |
図6. 各ポートにおけるUSB2.0通信有無とポータブルデバイスが引く事のできる最大電流
まとめ
本記事ではUSB給電規格であるUSB Battery Charging Specification 1.2(BC1.2)について振り返りました。また、USB給電仕様については、 BC1.2以外にもベンダー独自規格も複数存在しています。
これらに対応するためのコントローラや、新しい規格であるUSB Type-CやUSB Power Deliveryに対応するためのチップをお取扱いしておりますので、ご興味ある方は是非お問い合わせください。
※USB Type-Cに関しては、別の記事で詳細説明しております。以下リンク先をご参照ください。
- 概要編 USB Type-Cに置き換える方法 第1話 Type-Cの原理を知る
- 実践編 USB Type-Cに置き換える方法 第2話 USB2.0の場合
- 実践編 USB Type-Cに置き換える方法 第3話 USB3.1の場合
- 実践編 USB Type-Cに置き換える方法 第4話 USB2.0 OTG (USB On-The-Go)の場合
Texas Instruments社の製品をお探しの方は、メーカーページもぜひご覧ください。