• 公開日:2020年12月24日
  • | 更新日:2022年11月21日

特徴を徹底解説!Ethernet/IPとは?

特徴を徹底解説!Ethernet/IPとは?

はじめに

近年、ファクトリーオートメーションの業界において度々耳にするIndustory4.0という言葉。あらゆる産業機器がネットワークへつながり、乱立していた独自通信はオープンネットワークへと変わっていきました。今日に至るまで、さまざまなオープンネットワークのプロトコルが誕生し、各プロトコルではそれぞれの特徴を前面に、シェアを争っている状況でもあります。産業機器メーカーにとってみれば、産業ネットワークを導入してみたいと思っているけど、どのネットワークを導入すればいいか分からない・・・。そのような方も多いのではないでしょうか?

今回は産業ネットワークの中でも、世界的に普及しているプロトコルの一つ、Ethernet/IPについて紹介していきたいと思います。

Ethernet/IPの位置づけは?

Ethernet/IPは、CIP(産業用共通プロトコル)に標準Ethernetを適用したプロトコルです。他にCIPを使用したプロトコルとしては、DeviceNetやControlNet、CompoNet等が上げられ、CIPを適用された4大ネットワークの1つとされています。

ここで下図をみてください。制御ネットワークとしては概ねこのような分類ができるかと思います。CIPでは、センサレベルではCompoNet、デバイスレベルではDeviceNet、コントローラレベルではControlNetが使用され、それぞれシームレスに通信が行われるような仕組みがCIPネットワークの特徴となっています。Ethernet/IPは通信インターフェースとしては標準のEthernetが使用されています。したがって、上位のサーバと制御PCとの通信から、PLCとアクチュエータとの通信まで、幅広く使用できることが特徴の一つとなっています。

Ethernet/IPの特徴

Ethernet/IPの最大のメリットは、標準Ethernetを採用していることにあります。

標準Ethernetを採用していることのメリットとしては、下記が挙げられます。

・イーサネット技術の進歩に追従しやすい

・FTPやSMTPなどの標準的なネットワークプロトコルでメールやファイルの転送が可能

・標準Ethernetを搭載したプロセッサであれば実装可能

Ethernet技術の進歩に追従しやすい

Ethernetについては昨今においてもGigabit Ethernetなどの大容量化や、電力供給と通信をひとまとめにするPoEなど、様々な進歩が見られるかと思います。Ethernet/IPは標準Ethernetを採用しているため、そのようなEthernetの最先端の技術にタイムリーに追従できることには、期待ができるかと思います。

FTPやSMTPなどの標準的なネットワークプロトコルでメールやファイルの転送が可能

Ethernet/IPは産業ネットワークに不可欠なリアルタイム通信と、TCP/IPの通信を混在させることが可能です。

そのため、ファイルやメールの転送などの標準的なネットワークの通信も可能であることから、他のプロトコルと比べても汎用性・拡張性に優れているといえるかと思います。

標準Ethernetを搭載したプロセッサであれば実装可能

他の産業ネットワークのプロトコルによっては、物理層やデータリンク層においても独自のプロトコル仕様が要求されることがあります。そこで半導体メーカーとしてもなかなか対応した製品の市場投入が遅くなり、プロトコルとしては既に存在しているのに対応したハードウェアはない・・・なんてことも起きかねません。Ethernet/IPは標準Ethernetを採用することにより、対応させるプロセッサの選択肢も広げることができ、柔軟性の高いプロトコルと言えると思います。

接続構成は?

Ethernet/IPのノードの種類やトポロジ、接続仕様について説明していきたいと思います。

通信仕様

下記にEthernet/IPの通信仕様についてまとめたものを記載します。

トポロジは、スター、ライン、リング、ツリー型に対応しています。なお、通常のリング型では異常を検出した際などに切替に時間がかかることを防ぐために、高速にネットワークを切り替えるDLR(Device Level Ring Protocol)という機能を使用しています。通信の種類はEthernet 10/100 BASEを使用します。

最大接続台数に制限はなく、ケーブルにおいては、一般的なCat5e・RF45モジュラープラグのEthernetケーブルで接続が可能です。

スキャナとアダプタ

よく様々な通信において、複数の危機の制御や操作を司るマスターと、マスターから一方的な制御によって動作するスレーブ機のように役割分担を行うマスター・スレーブの仕組みはよく耳にすると思います。

しかしながら、Ethernet/IPではこの概念では無く、スキャナとアダプタという名称で分かれています。

スキャナはマスター・スレーブ構成で言うと、マスターに近い役割になります。

接続先に対して送信するメッセージに制限なく通信を行うことができる点がスキャナの特徴になります。

それに対しアダプタは、マスター・スレーブ構成で言うと、スレーブに近い役割になります。

スキャナとは違って、アダプタからは任意のタイミングで通信を行うExplicitメッセージのみ送信可能です。逆に言うと、他のメッセージについてはアダプタのタイミングで始めることはできません。

必要なソフトウェアとその仕組み

各種産業ネットワークを実現する方法としては、専用LSIを採用する方法と、対応したプロセッサを使用する方法の2通りがあります。専用LSIは購入するだけで産業ネットワークを実現することが可能ですが、別にホストプロセッサを用意しないといいけない点は、コストや実装面積の面ではデメリットとなります。

それに対してプロセッサを使用する方法、ソフトウェアで通信を実現することで、プロセッサ1チップで通信が可能です。

ただし、プロセッサを使用してプロトコルを実装する場合はもちろんソフトウェアが必要となり、どうやって入手・開発していけばいいかという疑問が残ります。今回はそんな方のためにプロセッサを使用した場合を例に、Ethernet/IPのプロトコル構成や実現方法について説明します。

また、各種プロトコルに対応したプロセッサを用意すればソフトウェアも付属してくる、というわけではなく、別の会社から購入または実装をお願いしなければいけないケースがほとんどです。

今回はEthernet/IPを実現するには、どのようなソフトウェアが必要になってくるのか、また、それぞれはどのような役割を持っているのか、説明したいと思います。

下記の図が、OSI参照モデルをもとにしたEthernet/IPのソフトウェア概要図になります。

物理層・データリンク層は多くの場合、ハードウェアで構成され、ネットワーク層よりも上位のブロックはソフトウェアで構成されます。

緑色の部分はハードウェアで構成されるため、半導体メーカーから、オレンジ色の部分は半導体メーカー・またはスタックメーカーから提供されるもの、青色のCIPはスタックメーカーから提供されるもので色が分かれています。

Ethernet/IPの特徴的な通信を行うCIP

CIPは前述した通り、共通産業プロトコルを意味し、CompoNetやDeviceNet、ControlNetにも使用されるプロトコルになります。こちらでCIP独自の通信を規定し、TCP/IPのソフトウェアと組み合わせることでEthernet/IPは成り立っています。

他のネットワークでCIPの通信に慣れている開発者は、すぐにEthernet/IPの実装に取り掛かることができます。

CIPで特徴的な機能としては、ImplicitメッセージとExplicitメッセージの両方を扱う点があります。

Implicitメッセージは他の産業ネットワークの言葉で言うと、いわゆるサイクリック通信を意味します。

決められた一定周期通信が行われ、1対Nのマルチキャスト送信も可能です。Implicitメッセージではノード同士でコネクションという論理的な接続回線を開設します。1つのノードで複数のコネクションを開設することができ、コネクションごとに通信周期を決めることができます。

Explicitメッセージは定期的に通信を行うImplicitメッセージに対して、任意のタイミングでのみ通信を行うメッセージになります。また、Explicitメッセージでの通信は1対1のみで行われます。Implicitメッセージに対応していないデバイスと通信を行うことができます。

CIPプロトコルは、基本的に専門のソフトウェアベンダーから入手が必要になります。

メッセージによって通信を使い分けるTCP/IPスタック

Ethernet/IPはIPフレームを利用し、TCPまたはUDP通信を行います。

先ほど説明したImplicitメッセージはUDP通信、ExplicitメッセージはTCP通信を使用し、通信が行われます。

UDP通信は一方的な送信を行い、正しく到達したかどうか等の確認が行われないため、信頼性は低いとされてきました。しかしそこで相手のノードへの到達確認をCIPプロトコルで行わせることにより、高い信頼性でImplicitメッセージの通信も行うことができます。

TCP/IPスタックについては、オープンソースで半導体ベンダーから提供されていたり、プロトコルベンダーでまとめて実装してもらうこともあり、入手方法は多岐にわたります。

標準的なTCP/IPスタックを使用することができる点が、プロトコルの柔軟性・開発のしやすさにつながっている特徴の一つと言えます。

汎用プロセッサで対応可能!使用するハードウェアについて

Ethernet/IPの物理層やデータリンク層はIEEE802.3に対応したEthernet通信を採用しています。

そのため、Ethernet通信に対応した多くのプロセッサで、Ethernet/IP通信が実現可能です。ただし、アプリケーションや接続方法によって必要なCPU速度やメモリ容量、Ethernetポートの仕様は異なります。例えば、ライントポロジで接続を行う場合、Ethernetポートはカットスルー機能が必要になってきます。まずは代理店やメーカーに相談してみることをお勧めいたします。

Ethernet/IPの通信実績や対応を謳ったメーカーも多く存在するため、それらを参考に選定してみるのも良いと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

Ethernet/IPはリアルタイム性に加え、CIPスタックやTCP/IPスタックを使用することで、他の通信プロトコルとの共存や開発における柔軟性が高いプロトコルとなっています。

産業イーサネットの導入を検討しているが、どのプロトコルが良いか迷われている方の検討の参考になれば幸いです。

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