- 公開日:2021年09月30日
- | 更新日:2022年11月18日
FPD-Linkって知っている?(3/4) ~FPD-LinkⅡ
- ライター:4ug
- インターフェース
皆さん、FPD-Linkって知っていますか?ほとんど触れる機会のなかった方々もいると思いますが、液晶パネルや映像インタフェースを知っている人であれば聞いたことがあるかもしれません。このブログでは、4回に分けて、そのFPD-Linkについて説明しています。
前回では、FPD-Linkの概要とその進化(世代)、またFPD-Linkの第1世代の技術的な内容について説明しました。今回は、そのシリーズ第3回ということで、第2世代であるFPD-LinkIIについて技術的な内容を説明します。
FPD-Linkって知っている?(1/4) ~はじまり~
FPD-Linkって知っている?(2/4) ~ FPD-Link(LVDS)~
FPD-Linkって知っている?(3/4) ~FPD-LinkⅡ~ (今回)
FPD-Linkって知っている?(4/4) ~FPD-LinkⅢ~
(1) FPD-LinkⅡ
前回のブログでFPD-Linkの第1世代について説明しましたが、今回のブログでは、FPD-Linkの第2世代について説明したいと思います。本技術ブログでは、FPD-LinkⅡついて知ることができ、アプリケーションに最適なインタフェースを使用することができるようになります。
FPD-Linkから第2世代のFPD-LinkⅡへ進化を遂げた際の一番の違いは、これまで、3~5対必要である差動ペアを1対の差動ペアに集約したことです。 クロックをデータに埋め込むことで、これまで、データ伝送の最大の障害であった、データとクロックのスキュー問題から解放されました。
図 1 FPD-LinkⅡのパラレルtoシリアル
*1: 出典:Texas Instruments – Product page
『10~43MHz、18 ビット・カラー、FPD-Link II シリアライザ』
https://www.tij.co.jp/product/jp/DS90UR903Q-Q1
*2: 出典:Texas Instruments – Product page
『10~43MHz、18 ビット・カラー、FPD-Link II デシリアライザ』
https://www.tij.co.jp/product/jp/DS90UR904Q-Q1
クロックとデータを1組の差動ペアに集約した結果、データレートはFPD-Linkの1組の差動ペアのそれに比べ高くなります。 伝送速度が高くなると、伝送路の信号損失は大きくなります。FPD-LinkⅡでは、信号受信部に、伝送路損失を補償する、イコライザー回路を内蔵し、この問題を解決しました。 この結果、FPD-Linkより総帯域幅が広がったのにも関わらず、より長距離伝送が可能になりました。伝送レートは、1.8Gbps以上に上がり、SD(720 x 480p), SVGA(800 x 600) 相当の画を伝送出来ます。
主な製品ポートフォリオは以下です。 LVCMOSやLVDS(FPD-Link)の入出力に対応します。
図 2 FPD-LinkⅡ製品ポートフォリオ
FPD-LinkⅡにおいて、信号が正しく再生できるか否か、いわゆる、信号品質の評価には、他のシリアル通信でも使われる、Eyeパターンを使用します。 Eyeパターンとは、その名のとおり目(Eye)を意味します。 Eyeパターンは時系列に出力されたビットデータを、ビット毎に重ね合わせて表示したものです。 その様子は、丁度、人の目の形になることから、Eyeパターンと呼ばれるようになりました。 信号が遷移するタイミングと、次に遷移するタイミングの中点、つまり、目の中心で入力された信号の論理‘1’と論理‘0’を判断します。 目の中心に信号遷移の軌跡が無ければ、電圧値を基に、論理‘1’と論理‘0’を正しく識別できます。 もし、目の中心にビット遷移の軌跡が有ると、送信されたデータは正しく再現できません。
図 3 FPD-LinkⅡのシリアル信号Eyeパターン評価結果イメージ (左:Pass / 右:Fail)
図3は実際のシリアル信号のEyeパターンを観測した結果です。 左のEye パターンは正しく信号が受信できた時の波形です。 他方、右の波形は、正しく信号が再生できない時の波形を示します。 Eyeの開口を確認するために、それぞれに、青色と白色のひし形のパターンが重ねて表示してあります。 このひし形をマスクと呼びます。左の例では、信号がマスクに掛かることはなく、正しい信号伝送が約束されます。 他方、右の図では、マスクに被さるように信号が遷移し、この状態では、正常に伝送できていないことがわかります。 このようにEyeパターンを観測することで、品質を確認します。
伝送品質もFPD-Linkの第1世代目では、Inter-pair Clock Skew(インターペアクロックスキュー*3)と振幅電圧レベルを確認する必要がありましたが、FPD-LinkⅡは、Eyeの開口のみと容易に確認することができ、何と言っても、FPD-LinkⅡでは、大幅にデータ線を削減できることやClock信号が無くなったことが大きな特徴になります。それにより、伝送ケーブルの削減や基板面積の縮小が可能になり、アプリケーションへとしては、映像データを長距離配線(~10m*4)したい場合などに活用できます。例えば、書画カメラや監視カメラ、アミューズメント機器の液晶表示などに使用されるケースがありますので、ご検討のアプリケーションにご活用できるソリューションとなります。
液晶やカメラといったアプリケーションに対して映像用のインタフェースとしてFPD-Linkのラインナップ製品が活用できることが本記事で理解できたかと思います。今後カメラアプリケーションも多様化し、多くのシステムで活用されることが予想されます。その中で、映像伝送を行う際には、TI社製のFPD-Linkを一度ご検討頂ければと思います。
*3:クロックとデータのスキューを言います。詳しくは、LVDSの設計時に気をつけたい、5つのポイントを参照下さい。
*4:伝送されるケーブル品質により、伝送可能な距離は異なります。
(2) まとめ
この技術ブログで、第2世代FPD-LinkIIは、第1世代FPD-Linkに比べて、大幅にデータ線を削減できることが大きな特徴で、また、Clock埋め込み方式を採用したことも特徴の一つであることが理解頂けたかと思います。また、アプリケーションとしては、映像データを長距離配線したい場合などに活用でき、例えば、書画カメラや監視カメラ、アミューズメント機器の液晶表示などに適していることが理解頂けたかと思います。
次回は、第2世代FPD-LinkⅡに比べて、高速かつI2Cなどの低速制御信号も一緒に伝送できる第3世代FPD-Linkのについて、新しく追加された機能や仕様、アプリケーション例やTIの製品ポートフォリオなど紹介しますので、ご期待ください。